中山富三郎(初代)なかやまとみさぶろう ― 写楽(1794年)

Tomizaburo Segawa, Actor Portrait by Sharaku (二代目瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木), Kabuki actor woodblock print, Edo period, 1794
写楽:歌舞伎役者絵 - 初代中山富三郎

東洲斎写楽の作品

東洲斎写楽の木版画「初代中山富三郎のさざなみ辰五郎女房おひで(しょだいなかやまとみさぶろうのさざなみたつごろうにょうぼうおひで)」は、寛政年間(1794年)に発表された木版画で、役者絵大首絵シリーズのひとつとして知られており、女形役を描いた中でも特に名高い一枚です。

作品「初代中山富三郎のさざなみ辰五郎女房おひで」について

写楽はこの作品で、おひで役を演じる中山富三郎を描いています。おひでは、さざなみ辰五郎の妻として登場する人物であり、後に安倍宗任の妹てりはと明かされる重要な設定のキャラクターです。

強烈な表情や繊細な仕草の表現、衣装の細部に至る描写を通じて、役の内面的な世界と舞台上の存在感を同時に伝えています。

初代中山富三郎について

中山富三郎(1760–1819)は、江戸時代の著名な女形役者のひとりです。

その演技は緻密で写実的、女性の役を生き生きと表現し、観客を魅了しました。

優雅さと品格を兼ね備え、細やかな身振り手振り、声の調子を操ることで、舞台に独特の世界を生み出したと言われています。

当時の大劇場でも高く評価され、その遺産は歌舞伎における性別越境の演技伝統(女形)の芸術性と規律を象徴し続けています。

この役者絵の意義

本作は、写実的な表現と舞台上の激しい感情を融合させた、写楽の代表的なアプローチを示す作品です。

芸の本質と江戸歌舞伎の力を伝える貴重な記録であり、浮世絵や役者絵の傑作として高く評価されています。

江戸時代歌舞伎の象徴的な役者の姿を後世に伝え、当時の舞台文化を今に残す重要な作品です。


英題: Tomizaburō Nakayama as “Ohide,” the wife of Sazanami Tatsugorō

和題: 初代中山富三郎のさざなみ辰五郎女房おひで(しょだいなかやまとみさぶろうのさざなみたつごろうにょうぼうおひで)

役柄: 『近江屋屋舗』のさざなみ辰五郎女房 おひで(後にてりはと判明)

作者: 東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)

制作年: 1794年 / 寛政6年(江戸時代)

技法: 木版画(浮世絵)

ジャンル: 歌舞伎役者絵