坂東三津五郎(二代目)ばんどうみつごろう ― 写楽(1794年)

Mitsugoro Bando, Actor Portrait by Sharaku (大和屋是業 二代目坂東三津五郎の奴くが平), Kabuki actor woodblock print, Edo period, 1794
写楽:歌舞伎役者絵 - 二代目坂東三津五郎

東洲斎写楽の作品

東洲斎写楽の木版画「大和屋是業 二代目坂東三津五郎の奴くが平(やまとやぜぎょう にだいめばんどうみつごろうのやっこくがへえ)」は、1794年(寛政年間)に制作された浮世絵役者絵であり、歌舞伎役者とその劇的な存在感を大胆に表現した写楽の代表作のひとつです。

この作品は、坂東三津五郎(二代目)が「奴くが平」を演じる姿を描いており、大和屋是業(やまとやぜごう)という歌舞伎の名跡と伝統を背景に持つ版元による作品です。

大首絵の中でも特に写実性と緊張感に富み、写楽独自の劇的な迫力を感じさせます。

作品「大和屋是業 二代目坂東三津五郎の奴くが平」について

この版画は、江戸で上演された歌舞伎『奴くが平』に登場する役柄を三津五郎が演じた場面を描いたものです。奴くが平は、家臣や従者として現れ、大和屋一門の芸統に属する系譜でも知られています。

富三郎を「警戒と決意」の一瞬で描き出し、鋭い顔の輪郭やややねじれた姿勢によって、緊張感と集中力を表現しています。

衣装の詳細、手の位置、心理的な即時性が周到に表され、写楽の初期の傑作に共通する特徴が強く感じられます。本作は写楽の「大首絵」シリーズに含まれ、江戸の舞台芸術の力強さを伝える作品です。

二代目坂東三津五郎について

坂東三津五郎(二代目、1775–1831)は、江戸歌舞伎を代表する役者のひとりであり、勇壮な荒事から滑稽な役どころまで幅広くこなす多才な役者でした。

大和屋の名跡を継ぐ家に生まれ、その演技は迫力と感情の深みで高く評価されました。舞台上の存在感に優れ、観客を引き込む演技力で次代の役者たちに強い影響を与えました。

彼の芸は、立役(たちやく/男性の主役)の伝統の中でも特に重要とされ、江戸歌舞伎の発展に大きな足跡を残しました。

この役者絵の意義

写楽によって描かれた坂東三津五郎(二代目)の奴くが平は、歌舞伎の激しさと役者の個性を融合した傑作です。

太く力強い線や動きのある構図が、観客を舞台芸の核心へ引き込みます。写実性と人間味を兼ね備えた描写は、写楽の短くも輝かしい画業と、三津五郎の劇的な芸風の両方を物語っています。

浮世絵史、そして江戸期歌舞伎史において、高く評価される作品です。


英題: Yamatoya Zegyo: Bandō Mitsugorō II as Kugahei, a Servant

和題: 大和屋是業 二代目坂東三津五郎の奴くが平(やまとやぜぎょう にだいめばんどうみつごろうのやっこくがへえ)

役柄: 奴くが平(江戸上演、1794年、大和屋系)

作者: 東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)

制作年: 1794年 / 寛政6年(江戸時代)

技法: 木版画(浮世絵)

ジャンル: 歌舞伎役者絵